一昨日は石川金網さんが「おりあみ」にテスト印刷をしたものを見に来た。前回お出でになった時置いていったシルバー色の網に赤と青の印刷したものを見せた。私が適当に娘が書いた木の絵を全面に配置し、地模様のように印刷したのだが、これがまた好評で大喜びしてくれた。
 来られる前に電話で話した時、胸がドキドキすると見に来るのを楽しみにしていたが、期待を裏切らない出来だったようで、やった方も感動されると嬉しい。 
 一昨日は赤色の網と金色の網を持って見えた、三色の網が何枚も揃ったので色んなテストが出来る。今日はベタ印刷を試みてみようと思っている。ベタ印刷をすると網全体の色が変わる。赤に白ベタで印刷したらピンク色の「おりあみ」ができるかもしれない。裏表に印刷したら全く違う色の「おりあみ」誕生と言う事になる。 三色しか無かった「おりあみ」が色んな色のものが出来る、印刷する私が胸がドキドキしてしまう。
 パッド印刷と言うのは本当に面白い、いろんな事にチャレンジ出来る。新しい仕事が創造できるのが楽しい。長年パッド印刷を続けているが飽きると言う事がない。
 印刷が価値を付加してしまう、これが楽しい要因だが、街を歩いていても人が持っているモノには何らかの色付けがなされているのが目に付く、それが印刷のヒントになることもある。
 世の中には印刷屋でありながらパッド印刷と言う言葉さえ知らない人がいる。パッド印刷の印刷技法はかなり古くからある。
 特に腕時計の1秒刻みのメモリやメーカー名や時計の名称、製造国名など小さく印刷されている。腕時計メーカーは精細な文字目盛を印刷するのにパッド印刷をしていた。その当時にはシリコンゴムは世に出現してないので、ゼラチンをお椀のようなもので固めて今で言うパッドを造っていた。
 金属板にエッチングで凹版を作り、カミソリのようなものでインキを掻き、凹版に入ったインキをゼラチンのパッドでインキ拾い上げ、それを丸い金属板に転写していた。ゼラチンのパッドが女性のおっぱいのような形をしていたので「おっぱい印刷」と言う人もいたようだ。ゼラチン印刷と言う人もいたり、ゼラチンがグニャグニャしている様から蛸を連想し、「タコ印刷」と言う人が多かった。
 私が初めてパッド印刷を知った時は「タコ印刷」と言われていた。ところが日本の経済が高成長している時代にドイツからシリコンゴムを使ったパッド印刷機が全国に広まった。ドイツのタンポ社がメーカーでシリコンゴムのパッド印刷が出回った。パッド印刷を始めて知った人は「タンポ印刷」と言うのが数年広まっていたが、タンポと言うのはタンポ社の固有名詞だという事でうまくない。今でもタンポ印刷と言うとパッド印刷のことだと理解する人もいる。圧倒的に多かったのは「タコ印刷」だったが、「パッド印刷」と言う名称は歴史的には長くない、だから知らない人が多いのだと思う。
 私は「パッド印刷の伝道師」を自称しているが、名称だけでなくパッド印刷の技術を伝承しているつもりでいる。
 一昨日もゴム風船を造っているメーカーの方が見えたが、持参したインキが水みたいでまた乾燥が速い、しかもシリコンパッドにインキが付着しない、だからパッドで転写出来ない。パッドインキのように粘性がないとシリコンゴムに付着してくれない。結局今あるインキに粘性を持たせる研究をしてきて欲しいと言ったらやってみると言ってお帰りになった。