私の「なんでもくん」は正確に言えば凹版転写印刷機といっても良いだろう。凹版はグラビア印刷に代表されるもので、現在はビニ袋やポリ袋に印刷することに多用されている。素早く大量に印刷するには輪転機に版はセットされるので大きな版でコストも高くなる。版が高いので最小ロットでも何千も印刷しないと印刷コストを下げられない。少量の印刷には対応し兼ねているのが現状だ。
 パッド印刷も凹版を使って印刷されるのだが、シリコンパッドで凹版からインキを拾って印刷するので印刷面積は小さい、小さい面積しかいらない印刷ニーズにはパッド印刷が向いている。小さい面積といっても半自動印刷機の版は1センチ厚の10センチ角のスチール板にエッチングで彫るので版コストはそこそこ掛かる。印刷機自体も百万円単位のものになっている。
 そこで私が低コストで印刷する為に考え出したのが手動式卓上パッド印刷機「なんでもくん」と言うことになる。版もスチールでなく樹脂版なので低価格で済む。中でも40ミリ角の版は100枚単位だが一版80円と言う何処でも手に入らないような価格を作っている。
 「なんでもくん」ユーザーの中にはこの版を月に2000版以上消化している会社もある。そのくらい有効利用して頂くと私の鼻も高くなる。この会社は6,7年前と比べると飛んでもなく発展している。
 40ミリ角の版を凹版として使っているが、製版にはポジフィルムを使っている。ところがポジフィルムをネガフィルムにして製版すると凸版になる。
 昔は凸版印刷と言って大量印刷をしていた所があった、凸版印刷を社名にしている所もあるくらいだが、今は凸版に代表されるのは日常使っているハンコくらいだろう。
 我が社は樹脂版で凸版を作り「写真はんこ」なる商品も開発している。その写真ハンコを北斎の浮世絵をハンコに出来ないかという相談があった。
 昨日はその北斎の絵を写真製版してそのネガを持ってきた人が来た、40ミリ角の樹脂版に露光して現像したら40ミリ角の凸版が出来、北斎の絵がハンコになった。
 元々浮世絵は凸版印刷の元祖みたいなもので、それがハンコになっただけのことでもある。昨日は子供の遊びみたいな時間だったが楽しかった。はがき大の凸版を作れば紙を乗せてバレンでこすればまさに浮世絵といっても良いだろう。
 「ちょっと北斎」と言う版画を楽しむグッズを昨年「TASKものづくり大賞」に応募したが、落選してしまった。落選したが昨日のようにそれを使いたいと言う人が現れた。その人の商品として世の中に出て行って呉れれば嬉しいことになる。
 明後日からの「足立ものづくりフェスタ」では娘が「足立ブランドyouth」コーナーで子供相手に「ハンコをつくろう」というワークショップをやることになっている。どんなハンコを作らせるのか私には見せないで用意している。私もお手なみ拝見しようと思っている。