昨日は折り畳み式のPP製の椅子を持ち込んできた人が居た。分厚いPPの板1枚に折り目や組み合わせの為のフックや引っかけのカットがしてあるもので、組み上げるとかなり安定したゆったりした椅子になる。外国製なのでかなりの身体の大きい体重のある人でも安定して座れる。硬いソファのような感じで座れる。
 組み上げて前面になる所に超有名な自動車メーカーのロゴを印刷して欲しいと言う依頼だった。PP製と言うこともあって印刷を引き受けてくれるところが中々無かったらしい。ネットで調べて我が社に問い合わせてきた二人の人達でそれぞれ会社は違う。二人とも我が社で待ち合わせたらしく、来た車の方向が違う。一人は真っ赤な格好の良いフェアレディのオープンカーで、帰るときに聞いたエンジン音は何とも言えない爽快な音に魅了されてしまった。
 一人は4人ほどの企画会社で一人は30人の社員のいる倉庫業とアッセンブリー、配送をする流通業で、年代も同じような若い人達で二人とも個性豊かな感じがした。一人はJINRIKIと言う車椅子を人力車の様にどんな悪路でも軽く引っ張って行けるものに変身させてしまうものを扱っている。車椅子の人でも一寸した登山にも行けるが、震災などの時に避難するのには最適なものになる。車椅子の後輪は大きいので人手さえあれば階段も登れるものなってしまう。
 いずれにしても個性のある商品を扱っている人達のようだった。昨日は早速印刷テストをしてみたが、組み立て椅子は広げると1メーター半以上の広さになってしまう。その一部に印刷するのだが広い場所が居ることになる。取りあえず有り版で印刷してみたが、印刷は上手く行った。ただインキの密着がどれほど強固になっているか一晩開けて見ないと分からない。もう一つ同じPP製品でアイホンスタンドが有るらしい、アイホンスタンドと言うと卓上型のものが多いがこれは卓上でなく展示用のものかもしれない。それは4台、椅子は48台と少量だ。
 我が社が少量のものでも大量の物にでも対応する会社だと言うことが分かり、良い会社を見つけたと言って喜んでいた、もっといろいろな物に印刷するものが有るらしい。どんなものが持ち込まれるかこちらが興味津々ということになる。
 昨日はもう1点、これはどうも受けかねるようなものが有った。それはシール材で印刷した物の上に水性の印刷をして欲しいと言うのが有った。さらに面付印刷したものを半抜状態にして欲しいと言うのが有った。水性印刷も面倒だがこれは何とかなる、だが半抜をしてくれる抜屋が有るかどうかが問題だった。
 昔はステッカーなどはシルクスクリーン印刷をしてそれをビク抜と言って全抜でも半抜でもしたものだった。今はシルクスクリーン印刷に取って代わってインキジェットプリントで印刷したものを型など作ることもなく抜いてしまうプロッターがある。インキジェットプリント印刷が出現してシルク印刷業界は大きく地図が変わってしまっている。シルク製版屋もシルク屋もビク抜き屋も皆廃業している。
 昔から一人ビク抜屋をやっているのが居て、2,3年前に行ったら細々とやってはいたが、癌の手術をしたりしていて、いつまでやっていられるか分からないと言っていた。聞けば昨年末に亡くなってしまったらしい。
 頼みの綱が切れてしまって、抜型屋に電話して紙製品を抜くところは無いかと聞いてみたら1軒もないと言う話だった。抜型屋もほとんどが成型屋の仕事ばかり、薄い真空成型したものを抜く型を作っているだけだと言っていた。日暮里辺りで手広く型屋をやっていた所だから、其処が無いと言うのだから紙製品を抜くところは東京にはないだろう。
 考えてみれば昔親しくしていた銘板屋や印刷屋ともすっかり疎遠になってしまっている、バブルの頃には一緒に飲んだりゴルフに行った仲間も大勢いた、ある意味その人達が私を育ててくれたと言っても良い、その人達の消息を追いかける暇もないが、随分淋しいことになっている。世の中の移り変わりに着いて行けない人も大勢未だ未だ居る。私の場合は次から次へと新しい出会いが有るから、過去のことなど忘却してしまう。
 忘却と言えばこんなことを思い出してしまった。NHKの放送ドラマ「君の名は」のタイトルで「忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心の悲しさよ」といつも言っていた。子供の頃よく聞いた言葉だったが、なんの事だかさっぱりわからなかった。このドラマが始まると銭湯がかっらぽになってしまうくらいヒットしたラジオドラマだった。確かに過去を思い出すと淋しい、悲しいことが多い。だが、そんな感傷に浸ってる暇がない、今日はどんな一日が始まるか、どんな楽しみが始まるかが生きている証になる。
 今日も午前午後にアポが有って「なんでもくん」研修にどんな人が見えるか、どんな反応を示してくれるか、楽しいことばかりだ。