「マーケティングとは商品を売れるように仕掛けることではない。マーケティングの役割は販売ではなくて、社会が求めている価値を提供し、その見返りとして利益と交換することだ。」とマーケティングの神様コトラーは言っている。
 昨日来た方は印刷業としてはつい最近までは顧客に少し割高だが良いものを提供していたので売り上げが落ちることは無かったが、最近になって売り上げが落ち込んでくることが避けられない、如何したものかと悩んでいるらしかった。印刷業としては他社より卓越したデザイン力で顧客を満足させていると言う自負があり、自信を持って事業をしていたのは言葉つきでもわかるような人だった。
 この人は印刷とは紙媒体にするもので、形のあるものへの印刷など考えたことも無かったらしい。したがってパッド印刷などと言う言葉さえ知らなかった。言葉を知らないくらいだから当然のごとくパッド印刷がどんな機能を持っているかも知る由もない。それに初めて電話をくれた時に感じたのはこの人は供給者の論理で物事を考えている人だと思った。オフセット印刷に関しては大変な自信を持っているが、パッド印刷のニーズはどんな処にあるのかも全く予想だにつかない様子だった。言い方は悪いが全く無知だと言っても良かった。ただ自分のやっているオフセット印刷の世界の内だけをひたすらに走っていたに過ぎない、他の世界に関心を向けることも無かった様子がありありとしていた。
 私が形のあるものへの印刷ニーズは無尽蔵にあると言っても理解できないようだった。そこでパッド印刷とはどんなものかを知ってもらうため「なんでもくん」で紙やゴルフボール、そこにあった石にも印刷して見せている所へ、異業種交流会の他のグループの人だが、印刷相談に来た人が有った。持って来たのがステンレスの線材で組み上げたシャンプーボトルやボディーソープを置くスタンドでその線材に会社ロゴを印刷出来ないかと言う相談だった。全くタイミングとしては最高で、その針金のスタンドの正面にそこいらにあった版で印刷して見せた。5ミリ位の線形だから十分印刷が乗ってハッキリ文字が読める。「なんでもくん」のスペースには入らない大きなスタンドもあったので、それには「どこでもくん」で印刷して見せた。それを見て両者とも同じように驚いていた。
 業務用の浴用剤を置くスタンドだから1000台くらいのものでしかないが、何処かにメーカー名を記したいのだろう。
普通は銘板を取り付けたいのだろうが銘板のコストは結構かかる、それに代わって刻印をしたものもあるらしいが、刻印も型代が相当かかる。刻印は手間もかかるがそもそも目立たない、もっと良い方法は無いかと、やはり同業者だが「あだち新製品開発講座」に参加している人に相談したら、我が社だったら簡単にできると紹介されたらしい。この人もパッド印刷などと言うものに全く関心が無かった人だった。時々は会合で顔を合わすのに私が何をやっているのかも知ろうとしていなかったに違いない。
 「脳に悪い7つの習慣」の最初に出てくるのが「1.興味がないと物事を避けることが多い」とあるが、自分やっている事や業界の範囲だけに関心を持つのではなく、仕事をするうえで一番重要な事は何事にも関心を持ち、神経を四方八方に配り、知識や情報を自分のものとすることが必要だと言えると思う。多くの人とのコミュニケーションを持つことが脳を活性化させる。結果、時代の変化を感じ取ることも出来るはずだ。
 過去の成功した時期を忘れずに、再びそういう時が来るのを待つ人が未だ未だ多い。
 
 話は変わるが認知症の患者が300万人を超えたと言う、65歳以上の人の10人に1人が認知症になっているらしい。私の個人的な見解だがタバコを吸う人が少なくなっているのと関連しないかを考えてしまう。喫煙者に認知症になる人がいないとは言えないがごく稀だと言う事を知る人が少ない。そこいらを行政も再考する必要があると思う。しっかり検証すべきだと思っている。